546 名前: えっちな21禁さん 投稿日: 03/05/11 21:23 ID:aZN0MCLp 中学時代、好きな女がいた。
甘い声と、彼女がいつも軽くつけているバニラのコロンの匂いが好きだった。
俺は当時、ある高校に進みたくてガリ勉をしていた。
彼女はちょっとグレていて、学校も休みがちだった。
あるとき、彼女が数週間も学校を休んだことがあった。
いまから考えるとキモいとしか思えないが、俺は彼女のことがもうどうしようもなく気になり、彼女の家までいった。
緊張しながら彼女の家のベルを鳴らすと、出てきたのは彼女本人だった。
「あれ?(俺の名前)じゃん。どーしたのよ」と彼女。しどろもどろに「心配で…」と答える俺。
彼女は「えー、なんで?」と笑いながら、それでも俺を家の中に招き入れてくれた。
私服の彼女は、妙に大人っぽかった。深いV字のセーターから、胸元が微かに覗き見えた。
彼女の母親が淹れてくれた紅茶を飲みながら、しばらく話をした。相変わらず俺はしどろもどろ。
やがて「(俺の名前)みたいな真面目にまで心配されてちゃ仕方ないしね。明日から(学校に)いくよ」と彼女。
翌日、学校には約束とおり彼女の姿があった。
俺と彼女は、いつもとはいえないけれど、以前よりももはるかに多く長い時間、一緒にいるようになった。
彼女の友だちとも仲良くなった。生まれてはじめてタバコを試したりもした。
逆にテスト前になると、彼女や彼女の友だちに、勉強を教えることもあった。
だが彼女たちの所属している暴走族の集会や、いつも溜まり場にしているゲーセンには連れていってもらえなかった。
先輩や他校の奴らとも会わせてはくれなかった。
いつも誰かが「お前はもう帰れ」とむげに俺を遠ざけていた。
真面目な俺を深入りさせてはいけない。なんとなく、それは彼女が皆に言い含めていたと感じていた。
そしてそれはそのとおりだった。
やがて受験の時期になり、俺はガリ勉に戻った。
内申や偏差値は、彼女たちと一緒に前から変わらず、志望校の合格ラインを軽く超えていた。
だが、落ちた。
滑り止めなんて、受けていなかった。
死んでしまおう、ではなく、もう生きているのはやめよう、そう思った。
くだらない理由かもしれないが、そのときの俺はほかに何も考えることができなかった。
遺書は書かなかった。代わりに自分の部屋を徹底的に掃除した。
翌日、学校にいってロッカーと机の中もキレイに整理した。
そして午前中の授業が終わり、昼休みになって、俺は学校を抜け出した。
カバンや学生証、財布はすべてロッカーに入れて、ただ千円札を三枚、ポケットにねじ込んでいた。
その場所にいくまでの交通費。
俺は駅に向かった。いい天気だったのを覚えている。
だが校門を出たところで、俺は呼び止められた。
彼女だった。一番会いたくない相手だった。
だが彼女は受験のことにはこれっぽっちも触れず、ただ「フケるん?だったら、遊びにいかない?」と笑っていった。
少し、息を切らしていた。様子のおかしい俺を、たぶん、追いかけてきたのだろう。
俺はどうしてか、彼女に対して妙な余裕があった。
「いいよ。でも金ないし。お前ん家にいってもいい?」
「…いいよ。なにしよっか?」
「エッチ。なぐさめてよ」
「いいよ。いまならあたしん家、誰もいないし」
ためらいのない彼女の返事に、俺は余裕がなくなった。
彼女の家には、誰もいなかった。
二階の彼女の部屋にいき、無言のまま、お互いに制服を脱いだ。
ベッドのうえで抱き合った。
彼女は「あたし、はじめてじゃないんだ。ごめん」と真面目な顔をしていった。
生まれてはじめてみる女の裸。それまでの僅かな知識を総動員して、俺は動いた。
おそろしく身勝手なセックスだったと思う。
そのうえ、俺は結局、最後までできなかった。
挿入まではできた。だが途中でなえ、どうしようもなくなった。
無言のままのふたり。先に口を開いたのは、彼女の方だった。
「ごめん。もしそんなつもりじゃないんなら、思いっきり笑ってくれていいんだ。だけど…」だけど…。
続く彼女の台詞に、俺は自分が大人になったと思ってからはじめて泣いた。
彼女に頭を抱きかかえられながら、声を出して泣いた。
その後しばらくは電話をしたり、たまに会ったりもしたけど、俺と彼女が付き合うようになったりしたというわけでもなく、この話はこれでおしまい。
もちろん一部は脚色しているが、いままで誰にもいえなかったことが書けて、気持ちが晴れた。自慰長文、申し訳ない。
ただ最後にひとつ。
どうして彼女はあの日、俺のことを呼び止め、抱かれてくれたのか。
俺のことが男として好きだった、というわけではなかった。
あの日、彼女は自分の腕の付け根をみせてくれた。白い肌に、縦に長く乱れた傷跡があった。たぶん、動脈がある辺り。
「だけど…もし自殺とか考えているんなら、考え直してほしいんだ。あたしも同じことを考えていたときがあったから。
そのときは失敗しちゃったけど、でも死ねるまで繰り返そうと思ってた。
だけど、誰かが自分のことを心配してくれているんだってわかったから、あたしはいまも生きている。
そいつはあたしの命の恩人で、あたしはそいつになにかがあれば、もうどうやったって助けるよ」
いまでも俺にとって彼女は「いい女」のナンバーワン。